さらば、パンターニ。

今日の夕刊を読むまで知らなかったのだが、イタリア・リミニで現地時間の14日滞在先のホテルで死亡しているところを従業員に発見されたそうだ。
死因は現在のところ不明だが、検死した医師が言うには「脳と肺に浮腫があった。外傷性の死因でないことは確か」という事らしい。

彼は「海賊」の愛称で呼ばれ’98にイタリア人として33年ぶりにツール・ド・フランスで優勝。同年ジロ・デ・イタリアでも優勝しておりWツール制覇を達成した、自転車のロードレースの人気選手だった。
俺が彼を知ったのは’98のツールをTVで観て激しい走りに一目惚れしたのが最初で今にして想えばこの頃が彼の全盛期。
これ以降はドーピング問題に巻き込まれ失格になったり、好不調が激しく精彩を欠くようになった。

彼は繊細な性格だったらしく親しい知人には、ファンの期待に応え続けることの苦悩を漏らしていたらしいし、一連のドーピング疑惑などもあって鬱病の気があり、被害妄想に苛まれていた形跡が残されている。
ホテルの部屋に「自転車界全体に、わたしに対する悪だくみがある」との自筆の文章や、ホテル内で会話を交わした人の証言では「楽しく話していたかと思うと急に沈み込み『あなたもわたしを嫌っている』と言われた」等と伝えられている。

日本ではロードレースが盛んでない為に彼を知らない人が大多数だがヨーロッパでは大スターでとりわけイタリアではサッカーのバッジョやデルピエロ以上の人気を博した英雄だった。

彼がドーピングをしていたのか否かは判らないが、万が一彼がドーピングをしていたとしてもそれは彼だけの責任では無い。
そして彼は完全にクロ判定での失格にはなっていない、あくまでもグレーゾーンに属しており健康上の理由での失格。
彼自身、終始身の潔白を主張していた。
彼の遺体の側にあった複数の精神安定剤も全て医師の処方を受けたものだった。

最後に医師の所見では彼の心臓はドーピングをしている人間のそれとは違ったらしい。
自殺か事故か判らないが、英雄は常に孤独と重圧に蝕まれるのだろう。
マラドーナのように落ちぶれてもいいから生きていて欲しかった・・・。

生きた年月で判断するのは変だけど34歳でこの世を去るのは早すぎる、今はただ彼の冥福を祈るだけ。